風の吹く丘で

日常の話

好きなティラミスは何ですか?

 

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「ティラミス氷」確かに話題になるのも頷けるスイーツである。セブンイレブンが発売したティラミス氷が美味しいとネット上でうわさになっていたが、予想以上に満足する味わいであった。シャーベット的なものに、ティラミスの味付けをしたものだろう?そんな風に高を括っていたのだが、実際食感は柔らかく、本物のティラミスを冷やして食べているような感じで、品のある味わいだった。そしてこれだけのクオリティーのあるアイスが、たった150円で販売されていることに驚く。何故もっと早く食べなかったと、久々に後悔している。

 

僕が中学生くらいに上がった頃、我が家の家計がかなり逼迫していた。そのため母親が新たにセブンイレブンで働き始めた。母はよく、日切れになったパンであったり、スイーツを定価よりも少し安い値段で買っていた(今はそういうのに厳しいだろうが、当時はそこまでうるさく言われていなかったと推測される)

そして食卓には毎朝のようにセブンイレブンのパンが籠に置いてあり、好きなパンを起きた順に食べて行くのが、我が家の朝の様子である。あんぱんからカレーパン、クリームパン、メロンパン、総菜パン各種。実際ほとんどのパンを食べ尽くしており、あれが自分にとっては青春の味のひとつといっても過言ではない。

家計も非常に厳しく、嗜好品と呼ばれる類のものをあまり購入することのない我が家であったが、給料が入った日、母は良くセブンイレブンの「ティラミス」を兄妹3人分買ってくれる。とはいっても、日付を見れば賞味期限切れが近いもの、または過ぎたものである。

僕ら3人にとって、セブンイレブンのティラミスは「超贅沢品」であり、貪るようにあっという間に平らげてしまう。明らかに他のスイーツとは違う美味しさであり、至福のひと時であった。賞味期限が切れていたからかどうかは定かでないが、少し水っぽくなっていたが、それもまた当時の記憶の中に深く刻み込まれている。

大人になって、イタリアンの店では定期的にティラミスを頂くし、ケーキ屋さんでもティラミスを選択することは多いのだけど、僕にとって未だにあの、貧しい時代に食べていたものを超えるティラミスに出会ったことはない。

繊細さと儚さ、甘さとほろ苦さ、そして水っぽさ。それらが何層にも渡って積み重ねられているそれは、平成という時代に、僕ら3人を抱えて走った母親の人生に重なっているのだろうか。未だにセブンイレブンで、「超贅沢品」のティラミスを手にしても、レジに持っていくのを憚る自分が存在する。買うときは、そう、何か特別な時だけである。